実話をもとにした航海映画として、Netflix配信をきっかけに再注目されている
『喜望峰の風に乗せて』と『トゥルー・スピリット』。
どちらも「単独航海」という極限の挑戦を描いた作品ですが、
実はその内容・描き方・伝えたいメッセージは大きく異なります。後述しますが、この記事をごらんなって
2つの作品をみようと思った方、管理人は見る順番が大切かな?と考えます。
理由は後でのべます。
この記事では、
- それぞれの実話背景
- あらすじと人物像の違い
- 映画としての方向性
- 見る人を選ぶポイント
- どちらが自分に合うか
を、ネタバレを含めつつ比較していきます。
まずは2作品の基本情報を比較
喜望峰の風に乗せて
- 公開:2018年
- 原題:The Mercy
- 主演:コリン・ファース
- 実話モデル:ドナルド・クロウハースト
- テーマ:挫折・虚構・人間の弱さ
トゥルー・スピリット
- 公開:2023年
- 配信:Netflix
- 主演:テイガン・クロフト
- 実話モデル:ジェシカ・ワトソン
- テーマ:挑戦・成長・静かな勇気
同じ「単独航海」でも、
描かれる方向は正反対と言っていいほどです。
実話の背景がまったく違う
喜望峰の風に乗せて|追い詰められた大人の物語
『喜望峰の風に乗せて』は、
1968年に開催された世界初の単独無寄港世界一周レースが舞台。
主人公ドナルド・クロウハーストは、
- 資金難
- 家族への責任
- 世間からの期待
に追い詰められ、
「完走していないのに航海日誌を偽造する」という選択をしてしまいます。
この作品は成功譚ではありません。
むしろ、崩れていく精神の過程を丁寧に描いた映画です。
ドナルド・クロウハーストの性格を考察する
― なぜ彼は嘘を選び、戻れなかったのか ―
ドナルド・クロウハーストは、単純に「嘘をついた男」「失敗した挑戦者」と片付けられる人物ではありません。
彼の行動の背景には、理想主義・承認欲求・恐怖・誠実さの欠如と誠実さの共存という、非常に人間的な矛盾がありました。
① 根本にあるのは「理想を信じる性格」
クロウハーストはもともと、
・技術者
・発明家
・新しいアイデアを信じる理想家
でした。
彼は自分のヨットや航海計画に、強い自信と夢を持っていました。
この点だけを見ると、彼は決して卑怯な人物ではありません。
ただし問題は、
👉 理想を信じすぎて、現実を直視できなかったこと。
船の不備、経験不足、資金難――
「今は無理だ」と撤退する判断を、彼は最後まで下せませんでした。
何事も撤退は名誉あるものと心得ています。
成し遂げるためには名誉ある撤退はひつぜんかと。
絶対にチャンスは来るとしんじることですね。
② プライドが高く「弱音を吐けない」性格
クロウハーストの大きな特徴は、
人に頼れない・失敗を認められない性格です。
- 家族に失望されたくない
- 支援者を裏切れない
- 世間から無能だと思われたくない
この強いプライドが、
「途中でリタイアする」という最も現実的な選択肢を消しました。
結果として彼は、
👉 嘘をついてでも“続けているふり”をする道を選びます。
③ 嘘をついたのは悪意ではなく「恐怖」
重要なのは、
主人公クロウハーストが最初から人を欺こうとしていたわけではない点です。
彼の嘘は、
- 保身
- 悪意
- 金目当て
というより、
恐怖から生まれたものでした。
「戻ればすべてを失う」
「続ければ、まだ何かが変わるかもしれない」
この心理は、極限状態に置かれた人間なら誰でも陥りうるものです。
④ 知性が高すぎたがゆえの自己崩壊
クロウハーストは非常に知的な人物でした。
航海日誌には、
- 哲学的思考
- 宗教的な表現
- 宇宙や存在への言及
が多く残されています。
しかしそれは、
知性で現実を上書きしようとした結果でもありました。
嘘を重ねるほど、
現実と虚構の境界が曖昧になり、
最終的に彼は「戻る理由」も「進む理由」も失ってしまいます。
⑤ クロウハーストは弱い人間だったのか?
答えは、NOでありYESです。
彼は勇気がなかったわけではありません。
むしろ、挑戦するだけの勇気はあった。
ただし、
- 自分の限界を認める勇気
- 失敗を公にする勇気
が、最後まで持てなかった。
この一点が、
彼を悲劇へと導いた最大の要因です。
性格を一言で表すなら
「理想を信じすぎた誠実な臆病者」
クロウハーストは悪役ではなく、
「現代社会でも起こりうる失敗の象徴」と言えます。
トゥルー・スピリットとの対比で見えるもの
ジェシカ・ワトソンと比べると、
- ジェシカ:怖くても正直でい続けた
- クロウハースト:正直でいることが怖くなった
この違いが、
2人の結末を決定的に分けました。
まとめ
ドナルド・クロウハーストの物語は、
「挑戦してはいけない」という教訓ではありません。
むしろ、
どこまで正直でいられるか
どこで立ち止まれるか
を、私たちに突きつける物語です。
だからこそ彼は、
今も語り継がれる存在なのだと思います。
トゥルー・スピリット|少女の挑戦と現実
一方『トゥルー・スピリット』は、
- 16歳
- 女性
- 単独・無寄港・無支援
という前代未聞の挑戦に挑むジェシカ・ワトソンの実話。
こちらは結果として
世界最年少記録を達成する成功の物語です。
ただし、描かれているのは単なるサクセスではなく、
- 恐怖
- 孤独
- 自己不信
と向き合いながら前に進む姿です。
主人公の年齢と立場が与える印象の違い
この2作を分ける最大のポイントは、
**主人公の「立場」**です。
| 項目 | 喜望峰の風に乗せて | トゥルー・スピリット |
|---|---|---|
| 年齢 | 中年男性 | 16歳の少女 |
| 背負うもの | 家族・社会的責任 | 自分の夢 |
| 結果 | 破綻 | 達成 |
『喜望峰の風に乗せて』は
「逃げ場のない大人の現実」を描き、
『トゥルー・スピリット』は
「未完成だからこそ進める若さ」を描いています。
ネタバレ比較|結末が示すメッセージ
喜望峰の風に乗せて(ネタバレ)
嘘を重ね、
現実と虚構の区別がつかなくなったクロウハースト。
最終的に彼は、
海の上で完全に精神を崩壊させ、
帰還しないという結末を迎えます。
観後に残るのは、
- 成功とは何か
- 見栄やプライドの危うさ
- 人はどこで引き返すべきか
という重い問いです。
トゥルー・スピリット(ネタバレ)
一方ジェシカは、
- 嵐で転覆寸前
- 通信不能
- 心が折れそうになる
数々の危機を乗り越え、
無事に世界一周を達成します。
ただし、映画は大きな感動演出をしません。
淡々と「やり遂げた事実」を描くだけです。
その静けさが、逆に胸を打ちます。
映画表現の違い|暗と光
喜望峰の風に乗せて
- 色調が暗い
- 音楽も重め
- 心理描写が中心
→ 観る人を選ぶが、深い余韻が残る
トゥルー・スピリット
- 海の映像が美しい
- テンポが良い
- 希望を感じる構成
→ 幅広い層におすすめできる
どちらを先に観るべき?
正直に言うと、
順番はかなり重要です。
おすすめは、
👉 トゥルー・スピリット → 喜望峰の風に乗せて
先に希望の物語を観てから、
現実の厳しさを知る方が、心のダメージが少ないです。
こんな人におすすめ
この2つの映画は実話ベースで『喜望峰の風に乗せて』は1969年の物語41年のタイムラグがありますね。
人の考え方も随分変わったとおもいます。
喜望峰の風に乗せて
- 実話映画が好き
- 人間の弱さを描いた作品が好き
- 重い余韻を楽しめる
トゥルー・スピリット
- 前向きな実話が見たい
- 挑戦する勇気が欲しい
- Netflixで気軽に観たい
まとめ|同じ海、違う人生
同じ「単独航海」という題材でも、
- 進み続けた少女
- 嘘に囚われた大人
人生の分岐点は、
**「正直でいられるかどうか」**なのかもしれません。
2本続けて観ることで、
実話映画の奥深さをより強く感じられるはずです。
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